鬼怒川
節
鬼怒川をあさ越えくれば桑の葉に降りおける霜の露にしたゞる
節
袷きる鬼怒の川邊をゆきしかばい引き持てこしみやこぐさの花
節
忍冬の花さきひさに鬼怒川にぼら釣る人の泛けそめし見ゆ
節
鬼怒川の高瀬のぼり帆ふくかぜは樗の花を搖らがして吹く
節
鬼怒川の蓼かれがれのみぎはには枸杞の實赤く冬さりにけり
節
鬼怒川の冬のつゝみに蒲公英の霜にさやらひくきたゝず咲く
節
鬼怒川の篠の刈跡に柔かき蓬はつむも笹葉掻きよせ
節
鬼怒川の堤の茨さくなべにかけりついばみ川雀啼く
節
鬼怒川のかはらの雀かはすゞめ桑刈るうへに來飛びしき啼く
節
鬼怒川は空をうつせば二ざまに秋の空見つゝ渡りけるかも
節
鬼怒川の篠に交れる鴨跖草は刈る人なしに老ゆといはずやも
千樫
藪かげゆ小舟にのりて水たぎつ鬼怒川わたりぬ春の寒きに
千樫
鬼怒川を西にわたりて土踏めば今さらさらに君ししぬばゆ
千樫
春の野の大野がなかをみつみつし鬼怒の流れは激ちやまずも