和歌と俳句

春の風

春風や屑物市に糸車 淡路女

春風や枝こまやかに椋榎 喜舟

春風や米屋が前の鳩十羽 喜舟

春風や紙漉く水に玉襷 喜舟

旅笠の裏の師の句や春の風 喜舟

春風や由良の戸守る松林 かな女

汽車も春風のふるさとのなか 山頭火

新国道まつすぐに春の風 山頭火

春風のお地蔵さんは無一物 山頭火

春風の鉢の子一つ 山頭火

春風のアスフアルトをしく 山頭火

まつたく春風のまんなか 山頭火

街へ春風の荷物がおもい 山頭火

春風や紙を貼られし籠の底 喜舟

春風や汐木が中の観世音 喜舟

萱山はのこれる穂にし春の風 悌二郎

疲れきし子を抱きあげ春の風 立子

泣いてゆく向ふに母や春の風 汀女

春風や煙草の煙さきにとぶ 立子

椿先づ揺れて見せたる春の風 虚子

春風に船は煙を陸に引き 汀女

春風や上げし線香の燃えてゐる 立子

絣解ゆきつ戻りつ春の風 立子

春風や消えなんとするおろうそく 立子

古蘆に著いてゐる葉の春の風 たかし