聖芭蕉かすみておはす庵の春 蛇笏
初春や島田おもたきタイピスト 草城
子供等に雙六まけて老の春 虚子
初春の二時うつ島の旅情かな 茅舎
巫女舞をすかせ給ひて神の春 虚子
腰まげて後ろ手に杖老の春 虚子
うたてしや火の一つ無く明の春 石鼎
新春の碧瑠璃これぞと見入りけり 石鼎
初春のものの中なる大炬燵 石鼎
はつ春の細き筧をみちびける 夜半
茶の花になほ初春の日和かな 青畝
初春や焦都相を改めず 草城
初春といひていつもの天の星 誓子
病む我を頼みてあはれ妹の春 たかし
あらたまの春のマスクや楽屋入 万太郎
初春や眼鏡のままにうとうとと 草城
初春や子が買ひくれしオルゴール 草城
喜寿の賀をすなほにうけて老の春 風生
老の春若き人々讃へつゝ 立子
初春の山の地蔵となられけり 波郷
為し得ること何をか残す老の春 風生
うれしさとやや淋しさと老の春 風生
命惜してふこといつはらじ老の春 風生
ほどほどになすことおぼえ老の春 立子
わが干支の八たび還りて酉の春 風生
世の中がふと面白く老の春 風生
臨終にして初春吟を書き残す 風生