和歌と俳句

源俊頼

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くれたけの つつをのみ見る せはしさに よもこのふしは あらじとぞおもふ

もとむるに したがふもりの たまなれば ひかりさすかに うせぬとをしれ

きみはしも ききわたりけむ 津の国の 長柄の橋を つくりそめしも

そでぬれて わたりしものを ふるせ川 ふかくも人の おもひけるかな

さやはさは あだにも人を わすれけり あやしやきみが こころならひに

春風に などやをりけむ みちのくの まがきがしまの 梅のはなかひ

鴫のゐる たまえにおふる はなかつみ かつよみながら しらぬなりけり

駒なべて かりする人は かりくらの とらふす野邊ぞ ゆかしかりける

とらふせる このしたくらく なりぬれば かりゆることも かたきなりけり

つくづくと ひとりゑみをも しつるかな あらましことを おもひつづけて

こぎもどれ かじもみとろし すはえして すすけにけらし おきつしまふね

かたちこそ ひとにすぐれめ なにとなく しとすることも をかしかりけり

きよみきの ひじりをたれも かたぶけて しひのつみえぬ 人はあらじな

にほふらむ よものやまべの 花よりも 恋ひしきものは 君が言の葉

たとふらむ はなこころには 言の葉の あきにならばや いろかはるべき

ちぎりおきし ことをばすての やまなれば よもさらしなと なほ頼むかな

さらしなは をばすてやまの ふもとにて いかでみやこに 名をとどむらむ

くもゐより こゑたかさごに おちたぎつ 流れぞ岩の 衣なりけり

はむおきか けいかにかうべ かしげるも さこそはつひに かへさざりけめ

えむたむか ふかきこころを つくせばぞ おきもかうべを よみかへりよけむ