和歌と俳句

源俊頼

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金葉集・雑
阿弥陀仏と 唱ふる聲を 舵にてや 苦しき海を 漕ぎ離るらむ

はるかなる おほえのはしは つくりけむ ひとのこころぞ みえわたりける

うたひくる あしまのこゑは ちりならぬ こころもうごく ものにぞありける

なるをなる ともなき松の つれづれと ひとりもくれに たてりけるかな

しばをぶね まほにかきなせ ゆふしてて にしのみやびと かざまつりしつ

たらちねも もとめざりせば をとめごが あとにもかげを ならべましやは

須磨の浦に たくものけぶり たなびけば きしうつなみの たたぬ日ぞなき

やまひめの みねのこずゑに ひきかけて さらせるぬのや たきのしらいと

ふねてらに のりうかぶなり よもすがら こゑをほにあげて よみすましつつ

にしけには わたのみさきも あるものを かげさかりぬる 身をいかにせむ

うらしまを なみもあけくれ うつせ貝 あまのはこのみ むなしとおもふに

あやしさは みなもととこそ おもひつれ はたへはこせの うちにぞありける

よそひとの つくれる罪と おもへども わかれうすると きくぞかなしき

おもふらむ しりくくりたる とりならば ふみはづしても かかるめ見じと

むかしせし あらましことの かはらぬを うれしとみえば いはましものを

伊勢の海の しほひのかたへ いそぐ身を うらみなはてそ すゑもはるけし

満ち来ばと まちつる潮も 過ぎぬれば うきみわたりを うらみてぞふる

わかわかと なりはえしても みゆるかな くひせにもとは まことなりけり

こともあらば そらゆめみてや かたらまし なずらひならぬ かげをわすれて

とへかしな たまぐしのはに みがくれて もずのくさくき めぢならずとも