和歌と俳句

源俊頼

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みつぎもの にひくは繭の 糸をもて くるてもたえず そなへつるかな

いのるごと ななのをやしろ こうこうと ことなはせよく くちはしるなり

かきごしに ほのつくだにも あるものを ねたくも梅の あるじなるかな

ちぎりありて はひかかるとも みゆるかな つたやこずゑの 妹背なるらむ

なこがれよ みすりもすまに やきつみて あかふまそての なたとおもひそ

かきやれば うきてながるる うきくさの よをはやくして すぎぬべらなり

たち縫はぬ 衣の袖し ふれければ みちとせへてぞ 桃も咲きけり

われふねの よをうみわたる つもりには おもてのなみに おぼほれにけり

金葉集・雑
せきもあへぬ 涙の川は 早けれど 身のうき草は 流れざりけり

詞花集・雑
賤の女が ゑぐつむ澤の 薄氷 いつまでふべき 我が身なるらむ

きくのみと なにおもひけむ あきくれば ひともうつろふ ものにぞありける

わがみとも 椿の枝の みゆるかな 灰になるべき ほどのちかさに

風をいたみ 由良のとわたる しばふねの しばしのがれて よをすぐさばや

雁がねの あとなき身とは しりながら いかがみぎりに ふみもつぐべき

うちわたる ひともおほのの 水無瀬川 あさきこころを たれかみざらむ

いしかはや はなだのおひの なかたえば こまのわたりの ひとにかたらむ

日暮るれば たけのそのふに ぬる鳥の そこはかとなき ねをもなくかな

吉野川 いはのゐせきを わきかへり しらゆふはなや たきのしらたま

とねりこの したにいはゆる こまゆひを ひきすてたらば ぬしやのるべき

うきことは めづらしからぬ 身なれども 旅にも袖の ぬれまさるかな