和歌と俳句

源俊頼

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よのなかの こころとけても おぼえねば むすぼほれても すぐしつるかな

もみぢちる おとはしぐれに たぐへども まぎるるかたも なき身なりけり

ふししばに やどれるほやの おのれのみ ときはかきはに ものをこそおもへ

よのなかを おもひはなてば はなちどり とひたちぬべき ここちこそすれ

おもひわび おつるなみだは くれなゐに そめかはとこそ いふべかりけれ

くちみやま くちたてりとや おもふらむ しられぬ谷の 松の古枝を

あさましや あはれうきよを しのびつつ なにとまがよふ わが身なるらむ

みちのべの こほりが下の ねつこくさ さとされし身の たへがたの世や

しみこほる 諏訪のとなかの かちわたり うちとけられぬ よにもふるかな

みのほどを そよなさぞとは おもへども なほうらめしき 世をいかにせむ

よのなかの かたちにみゆる ものならば ひきとどめてぞ うらみかけまし

はがへせぬ なげきのもりは 冬くれど つねにもがもな とこしなへなり

たれとかは わきてもいはむ わがために うらめしからぬ 人しなければ

さらぬだに かはらぬそでを 清見潟 しばしなかけそ なみのせきもり

たちいづれば ひちつかれつつ はしたかの すずろはしろき わが身なりけり

なにごとの しのびがたきに はつかりの うきよのなかに またかへるらむ

千載集・雑歌
世の中の ありしにもあらず なりゆけば 涙さへこそ 色変りけれ

われといへば いはきのやまの みねたかみ くものかからぬ ときをこそまて

よのなかを おもひしりけりと おもふより きえぬるしもの あはれなるかな

ときはなる うきことのはは こがらしの はげしきにさへ ちらぬなりけり