晶子
琵琶の海 山ごえ行かむ いざと云ひし 秋よ三人よ 人そぞろなりし
節
近江の海八十の湊に泛く船の移りも行かず漕ぐとは思へど
節
布雲に叢雲かゝる近江の湖あさ過ぎくればしき鳴くや鵙
琵琶の帆に煙霞も末の四月かな 蛇笏
茂吉
西ぞらにしづかなる雲たなびきて近江の海は暮れにけるかも
沖の島夏霞して晴れにけり 草城
茂吉
をりをりは光る近江のみづうみを見おろしにけり恋しむごとく
湖霧も山霧も罩むはたごかな 蛇笏
茂吉
まどかなる月はいでつつ空ひくく近江のうみに光うつろふ
茂吉
息づきて比叡山のみねにのぼるとき近江のうみにあかつきのいろ
家並欠け葱畑の上に鳰の湖 風生
驟雨やむ屋形にはやき琵琶の浪 蛇笏
天高き舟行ここにえり重囲 爽雨
舟行くにえりは綾為し湖の秋 爽雨
半夏水や野菜のきれる竹生島 去六