これより殺生石に行く
館代より馬にて送らる
この口付きの男 短冊得させよ と乞ふ
やさしきことを望はべるものかなと
野を横に馬引き向けよほととぎす
殺生石は温泉の出づる山陰にあり
石の毒気いまだ滅びず 蜂 ・蝶のたぐひ
真砂の色の見えぬほど重なり死す
また 清水流るるの柳は 蘆野の里にありて 田の畔に残る
この所の郡守戸部某の この柳見せばや など
をりをりにのたまひ聞こえ給ふを
いづくのほどにやと思ひしを
今日この柳の陰にこそ立寄り侍りつれ
田一枚植て立去る柳かな