壺碑 市川村多賀城に有
つぼの石ぶみは 高サ六尺余 横三尺計歟
苔を穿て文字幽也 四維国界之数里をしるす
この城 神亀元年 按察使鎮守符将軍大野朝臣東人之所里也
天平宝字六年 参議東海東山節度使同将軍恵美朝臣■修道而
十二月朔日
とあり 聖武皇帝の御時に当れり
むかしよりよみおける歌枕 おほく語伝ふといへども
山崩 川流て 道あらたまり
石は埋て土にかくれ 木は老て若木にかはれば
時移り 代変じて 其跡たしかならぬ事のみを
爰に至りて疑なき千歳の記念 今眼前に古人の心を閲す
行脚の一徳 存命の悦び 羇旅の労をわすれて 泪も落るばかり也