正岡子規

法の道に　何か漏るべき　我も人も　釋迦も阿彌陀も　皆これ佛

月見ても　花見ても思ふ　御佛の　法の教は　あきらけくこそ

首もなく　手もなくなりて　道の邊の　佛はもとの　石にぞありける

今も猶　うつし佛の　住むといふ　鷲の御山に　行く人もなし

火にも焼けず　雨にも朽ちぬ　鎌倉の　裸佛は　常佛かも

古寺の　棟木の柳　ありがたや　草木國土　悉皆成佛

旅にして　佛つくりが　花賣に　こひこがれしと　いふ物語

見なれにし　甍こぼてば　大佛は　空の真中に　あらはれにけり

なりはひを　ともしみ海士が　打つ網に　鯔も佛も　かゝらざりけり

青丹よし　奈良の都の　御佛を　見に行く人に　汽車で逢ひにけり

たゝなはる　��垣山を　見わたせば　なからは秋の　紅葉なりけり

��山の　��き木葉と　赤山の　赤き木葉と　たがひちがひつゝ

��き山　白き流に　照りはえし　紅の葉は　見れどあかぬかも

緑青を　塗りたる山の　裾山に　べにをときたる　紅葉散るなり

��山を　くれなゐ深く　泣き染むる　龍田女神の　血の涙かも

八千ひろの　淵の深きに　住む龍の　頤にある　玉の如き子や