和歌と俳句

正岡子規

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ぬば玉の 闇の夜空を 動かして 月ゆりいだし 星ふるひおとす

いたく痩せし 人の姿よ 今更に なんぢを憐む 足なへ男

からを討つ いくさと共に われ行くと 刀を持ちて 寫しゝ寫眞

肩なめて 寫しし友は 今は無し 病みさらぼひて 世に残る吾よ

球及び 球を打つ木を 手握りて シャツ著し見れば 其時おもほゆ

四年前 寫しゝ吾に くらぶれば 今の寫眞は 年老いにけり

夜山越え 朝川渉り 國見せし 昔思へば おとろへたるかな

吾ながら 同じ人とは 思はれず 髷結ひしあり 笠きたるあり

かりそめに 寫し置きしか わが後の かたみと思へば 悲しかりけり

足引の 山のしげみの 迷ひ路に 人より高き 白百合の花

人も来ぬ 奥山路の 百合の花 神や宿らん 折らんと思へど

天ざかる 鄙の小庭は つくろはず 松に並びて 百合の花あり

梅雨晴の 風やや強く 吹きにけり 折るるかと思ふ 鬼百合の花

つらなめて 百合咲く畑の 畑ぬしは 根を喰はんとて 植ゑにしものを

賤が住む 垣根の外の 荒畑に 蝶もすさめぬ 姫百合の花

鄙に住む 友を訪ひ来て 其友に 別るる門の 赤百合の花

夏避くる 出湯の宿に 我居れば 百合活けに来る をとめかほよし