和歌と俳句

東風

ごうごうと一とき東風の渡る湖 普羅

焼嶽の月東風ふく雲にながれけり 蛇笏

東風に帆を張りて復員船とは見えぬ 静塔

復員船東風吹く国旗ありやなし 静塔

群竹を傾けつくし東風離れ 節子

岩つかむ鳶もよろめき東風強し 風生

強東風の空澄みきつてゐたりけり 真砂女

東風吹いて女身に冷ゆる髪と爪と 節子

戸のすでに油彩のにほひ東風に訪ふ 爽雨

雲挙げてくしけづらるるさまに東風 爽雨

ももいろの壁に窓なし東風の街 青邨

強東風に鳴門わが髪飛ばばとべ 誓子

東風の空雲一筋に南へ 虚子

製鉄のけむりひきをり東風の浜 青畝

強東風に群れ飛ぶ荒鵜室戸崎 たかし

傾いてあと揺れに触れ東風の竹 悌二郎

わが翁眉を手草に東風の中 不死男

体重計東風吹く病衣捨てて乗る 爽雨

浄身にめざむる病後朝の東風 爽雨