和歌と俳句

與謝野晶子

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河かぜに 千鳥ふかれて はたはたと 打つや蘇小が 湯殿の障子

かたちてふ 好むところに 阿ねるを 疚しと知りて 衰へ初めぬ

光明の 明日ある人を ぬすまむと 密語す恋を とらへたまへな

まつり日の 物見車の ひとつとも 君がみまへに 在りける宵よ

なほ人は とけずけ遠し いかづちの 音もふれかし 二尺の中に

うぐひすは いであなものを 云ふものか 二挺皷を 下にするとき

何と云ふ みなつかしさぞ 君見れば 近おとりして 恋ひまさるかな

身をめぐり ほのほのごとき 雲ありて われを運びぬ 君が御胸へ

親すてし 悲嘆に闇を つくりける 下の心に 君を見つつも

中形の よき袂ふり 二町ほど ぬれぬれきぬる 水無月の雨

わかれては 京を千里の あなたとも 思ふ辺土に われすめるかな

夕べには ゆきあふ子なき 山なかに 人の気すなり 紫の

夜のまくら 赤き珊瑚に むら雨の ふるとしきかば 帰りこよ君

あひ初めし 日かやわかれの 涙かや 泣けば似るかな 心なごみて

山の鳥 海に往ぬ鳥 鳥のごと 人は走りぬ 雨の波戸場を

遠き目に 比叡とも見たる いただきや 大文字ある おぼろ夜の山

一の集 はた見し人も まろかりし 山もことごと むかしとなりぬ

わが鏡 たわつくらせし 手枕を 夢見るらしき 髪うつるかな

高ひかる 恋の星なり 地にして 君の死にます 日に消えぬべき

水仙を 華鬘にしたる 七少女 氷まもりぬ 山のみづうみ