七人の 恨みを負へば その声は 鐘皷のごとし 夜もいねかねつ
かくねたみ 死ねばかあらむ 大君の 魂しづめ祭 たまはるちふは
御仏は とがめ給はむ 否あらじ 摩訶不思議と あきれ給はむ
誰そきたり 紅き血ながし はなやかに 死ねなど思ふ 青草に寝て
よきことに したがふ時と あしかるに つくこころよさ 差別わかずも
君がため 菜摘み米とぎ 冬の日は 井縄の白く 凍りたる家
夜をこめて 大船いづる ぞよめきの 声などまじる 波の音かな
わが髪に 赤き葉おとす うるしの木 若葉しぬらむ 丘を思ひぬ
しら刃もて わが身つかるる ことばとも 思ひしことも けふはただごと
みにくきが 黒髪ちらし くることを なんらはばかる こととせぬかな
にくかりし 巻煙草かな ゆらゆらと 煙は立てつ 涙のまへに
冬の夜の 橋わたる時 どんどんと 云ふ音ききて 心なごみぬ
順礼の よろこびの経 おん僧の 悲みの経 二つきこゆる
大海の そこひも天の かなたをも きはめむとせず 君のこころも
咲く花の 園をとほらせ 京を行け われ青色の さし羽す君に
逢はぬをば なげき給へど しかもなほ 命死なぬは 男なればか
たゆみなく 心を張りて 天つ日を ながむる人は 早く死ぬらむ
去ねと云へど 君が門辺に はこびきて もて去りがたき わが心かな
ありのまま われはかなしき かごとすと 涙は云ひぬ さびしき女
悲しさを おのれつくりぬ のどかなる 心なき日の ありのすさびに