昼の月 すさまじ白し しびと花 咲くなる畔に 鼬し啼けば
つくりたる むしろに小屋の 小牛きて 寝れどもおはず 君おもひ居ぬ
わが太郎 二歳の牛の 角とらへ 友とするまで たけ生ひにけり
やせし馬 小牛ことごと 荷をになふ 苦しき国に 人となりにき
君いにて おのれ束の間 流涕す もののあはれを 知るてふことか
いはれなく われをなみする 心もて 手とらむとこし 君をなげきぬ
いつの日か 死も悔ゆるなき よろこびを たまひしことを わすれめやわれ
玉ならば うなじに掛けむ それよりも たふとき恋は いただきに載す
切先に わが紅き血を ぬることを 祝ひて親の 刀を貰ふ
恋ふと云ふ 言葉をもてし 君を刺す 時をうつさず われを刺せかし
逆しまに 山より水の あふれこし おどろきをして われはいだかる
少女子に やらはれし子は 象の背の 箱に坐りて 虎とりに行く
恋しきと 最もわれの いとへると 目にか見ゆらむ わが死なむ時
われ何と 云はむか知らず こころみに 百年ともに あらむとかたれ
鎌倉の 由比が浜辺の 松もきけ 君とわれとは 相おもふ人
流れ星 うつくしかりき 君とわれ くつは虫啼く 原にかかりぬ
さばかりも 仇めく上の 心いま 勘当をせむ ゆるし給ふや
鰭ふりぬ こころの奥の 池に住む くれなゐの魚 金色の魚
恋ひたまふ さるべき人も あはさぬや 火となりてわが 胸に来し君
おほらかに 君は忘れぬ わだつみに ものながせると ひとしとするや