挽歌の 中に一つの ただならぬ ことをまじふる 友をとがむな
君病みて のちの五とせ われがほに 歌よみし子は 誰れにかありけむ
まづわれの 心をとりて ただすこし 亡き人のこと 語る君かな
亡き人を 悲しねたしと 並べ云ふ このわろものを 友とゆるせし
またもなく 悲しきことを うちいでず 平かげにも 居給へるかな
この友は いく重心を もつ故に 悲しとなげき ねたしとわびぬ
たれよりも さきに見そめし かたはらの 人をなみする おん涙かな
恋人の 逢ふがみじかき 夜となりぬ 茴香の花 たちばなの花
わが髪の 裾にさやさや 風かよふ 八畳の間の 秋の夕暮
文のから 君の心を いと多く たくはへつると 涙こぼれぬ