われ乗せて こし馬なるや 天雲の たなびくうへに 青き羽見ゆ
川淀に 月あり舟に 人のあり 大あめつちに ほととぎす啼く
さとき人 来て云ふ君は 心枯る いないな相は 相人ぞ見む
黒き花 めぐるが中に 死ねかしと いとおほらかに あざけりて去ぬ
美くしき 目うるむことを 海に居て はやちにあふが ごとくおそるる
左右を見 うしろを見つつ 恋せよと 御祖の云ひし ことならなくに
妹背てふ このとこしへの 未了因 悲しき日のみ 多しともなし
天地に 一人を恋ふと 云ふよりも よろしきことば われは知らなく
古ききず 新らしききず 百七つ 弾のあとある 大船のごと
悲しみにおもねるごとき ここちして 忘れてありぬ そのかみの歌
ただごとに 故よしつけて われら居る それなたじかと 尋ねても見つ
その昔 そこなはれにし ものと今 全きものと よりてよろこぶ
この族に 害を加ふと ますらをの 千人の中に うたうて入りぬ
飽かむ日は われより去なむ かくありて 君は一歩も しりぞくなかれ
君恋ふる 心を払ひ にくめるは 初めに君を 恋ひけるこころ
わが知らぬ 戸口にたふれ 藁床に かきふせられて 心みとらる
身にしまぬ さがにしありけり 見すてられ あるを思へと 髪一つ抜く
藪柑子 実をみなとりて まひなひに やりつるあとは 胸のさわがし
いもうとと 七夕の笹 二つ三つ ながるる川の 橋を行くかな
ときに来て わが泉汲み 花をつむ ところをうべも あたへ給ひぬ