白妙に貴船の道はなりにけり山をみのはをも雪つもりつつ
冬枯れの浅茅が原も雪つみて昔の跡やいづくなるらむ
吹雪して越のねわたし風たけしいかがあらちの山はこゆべき
うれ葉もるしづりやしげき呉竹の古根も雪をいただきてける
居る鷺はおのが色にやまがふらむゆるぎの森に降れる白雪
雪ふれば波のぬくみに浦にいでて牡鹿の角も花ぞ咲きける
ふる雪にあまのしほやも埋もれて焚く藻のけぶり行く方もなし
宮木ひく音たえにけり纏向の檜原の山や吹雪しぬらむ
いたづらに雪に埋もれむためとてや山田のひつち秋におくれじ
ゆきかよふ蘆間は雪に隠されて鳰の古巣に道や絶えなむ
冬籠る賤のかきほに雪ふれば火焚きし濱に聲のみぞする
風はらふ梢につもる白雪を散ればかつ咲く花かとぞみる
軒狭きこやのしのやの蘆すだれはづれにけりな雪もとまらず
衣川むすぶこほりの消ぬが上に積もる雪をや綴ぢ重ぬらむ
山路いづる柴のくるまに雪ふれば花の木積める心地こそすれ