和歌と俳句

葛城山

芭蕉
猶見たしに明行神の顔

蕪村
みじか夜や葛城山の朝曇り

一葉
かつらぎや 久米路の橋の はしたにて 絶んものとは 思はざりしを

子規
葛城ノ ミ谷ニ眠ル ヰノシヽノ 鼾ノ上ニ 鳴クホトヽギス

晶子
すげ笠に あるべき歌と 強ひゆきぬ 若葉よ薫れ 生駒葛城

晶子
杉のうへに 茅渟の海見る かつらぎや 高間の山に 朝立ちぬ我れ

牧水
秋雨の 葛城越えて 白雲の ただよふもとの 紀の国を見る

牧水
旅人よ 地に臥せ空ゆ あふれては 秋山河に いま流れ来る

晶子
平かに 馬の鞍なす かつらぎの 高間の山に 春のかぜ吹く

晶子
やや黄ばむ あぶら菜の先 見るごとく 夕月にほふ かつらぎの山

晶子
唯ひとつ 青かづら這ふ 石のごと かつらぎ山は ありぬ月夜に

晶子
元日は 晴れ二日には かつらぎの 峰ましろにぞ 雪のふりける

晶子
冬は来ぬ ましらげ米の 押敷すゑ 神にまつらふ かつらぎの山

碧梧桐
葛城も丸き山なるかな

晶子
旅人が うら淋しかる 大音に 呼びかはし行く かつらぎの

葛城の雪は斑や枯柳 石鼎

青畝
葛城の山懐に寝釈迦かな

喜舟
花の道葛城の神おはしけり

草城
葛城のそびらが晴るる寒さかな

草城
梅日和葛城は雪をひからする

青畝
恋猫に月の葛城醜けれ

八一
くもふかみ いまかいざよふ あまつひの ひかりこもらふ かつらぎのそら

たかし
葛城の額を塗りて残る雪

秋櫻子
葛城の雲のうながす雨蛙

青畝
葛城の安きおもひの牡丹かな