和歌と俳句

続後撰和歌集

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行念法師
山鳥の はつ尾の鏡 かけてのみ ながきわかれの かげを恋ひつつ

土御門院小宰相
われながら しらでぞ過ぎし 忘られて なほおなじ世に あらむものとは

尚侍家中納言
いつはりと 思はで人も 契りけむ かはるならひの 世こそつらけれ

太上天皇(後嵯峨院)
こぬ人に よそへてまちし ゆふべより 月てふものは うらみそめてき

権大納言公基
月やどす 袖にもしるや うき人の おもかげそへて うらみわぶとは

千五百番歌合に 後鳥羽院御製
長月の 月みるかひは なけれども たのめしものを ありあけのころ

前内大臣基家
ちぎりこし そのかねごとは むかしにて ありあけの月の あらずもあるかな

内大臣
つれなしと いひても今は ありあけの 月こそ人の かたみなりけれ

右近大将公相
まちかぬる こよひもつらし ありあけの 月はわかれの ものとみしかど

右近中将忠基
こぬ宵も つらからぬかは 月影を あかつきばかり 何うらみけむ

藤原信実朝臣
山の端に まつよひとこそ ちぎりしが 月さへあらぬ ありあけの空

権中納言師継
おもひわび うきおもかげや なぐさむと みれば悲しき ありあけの月

修明門院大弐
つらしとは 思ふものから ありあけの うかりし月ぞ かたみなりける

藤原永光
今こむと いひしはことの かずならで いくよになりぬ ありあけの月

藤原為教朝臣
うしとのみ おもひしものを あかつきの ゆふつげ鳥は 今ぞ恋ひしき

正三位知家
なげきわび ねぬ夜の空の あけやらで うかりし鳥の ねこそまたるれ

賀茂種平
さりともと まつ夜も過ぎぬ いたづらに あけゆく鳥の ねのみなかれて

わするる草の種をだに といひける人の返事に 業平朝臣
忘れ草 ううとだにきく ものならば 思ひけりとは しりもしなまじ

よみ人しらず
忘られぬ 心ぞ今は うらめしき かつはかぎりと おもふものから

よみ人しらず
伊勢の海に あまのとるてふ わすれ貝 わすれにけらし 君もきまさず

藤原成宗
今はただ とはで年ふる 君よりも うきにたへたる 身をぞうらむる

寂縁法師
いまさらに わすると人を うらむれば 頼みし程の 見えぬべきかな

惟宗盛長
うらみわび ねぬよ重なる から衣 夢にも人は 遠ざかりつつ

藤原盛方朝臣
今はただ なれしその夜を おもひいでて わが身さへこそ 恋ひしかりけれ

興風
あさからむ ことをだにこそ 思ひしか たえやはつべき 山の井の水