和歌と俳句

続後撰和歌集

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藤原後蔭女
せかなくに たえとたえにし 山水の 誰しのべとか 声をきかせむ

高陽院木綿四手
わすられて ふるのの道の 草しげみ 露わけゆかむ ここちこそせね

人麿
あしひきの 山田のひたの ひたふるに 忘るる人を おどろかすかな

小町
しる人も しられざりけり うたかたの うき身も今や もの忘れして

千五百番歌合に 前大納言忠良
跡たえぬ 誰にとはまし みちのくの 思ひしのぶの おくの通ひ路

殷富門院大輔
よしさらば 忘るとならば ひたふるに あひみきとだに 思ひ出づなよ

前大納言基良
いつまでか わが通ひ路と 恨みけむ ゆきき絶えたる よその関守

前大僧正慈鎮
さしもわが たえずしのびし 中にしも わたしてけりな 久米の岩橋

久安百首歌中に 皇太后宮大夫俊成
人をのみ なにうらむらむ うきをなほ こふる心も つれなかりけり

法性寺入道前関白家に 左京大夫顕輔
つらしとて 心のままに 恨みても 後は思ひに たへむものかは

寂蓮法師
おのづから うらむるかたも ありなまし 身をうきものと 思ひなさずば

八条院高倉
身をかへて またもこの世に めぐりあはば 我つらからむ ことさへぞうき

西園寺入道前太政大臣公経
かれはてて 言の葉もなき まくず原 何をうらみの 野辺の秋風

西園寺入道前太政大臣公経
うき名のみ をじまのあまに 身をかへて いかにうらみむ 人の心を

従二位家隆
跡たえて 今はこぬみの はまひさき いくよのなみの したにくちなむ

藤原基俊
波よする 磯辺のあしの をれふして 人のうきには ねぞなかれける

躬恒
あまのこぐ たななし小舟 跡もなく 思ひし人を うらみつるかな

三条院女蔵人左近
ことさらに うらむともなし このごろの ねざめばかりを しらせてしがな