和歌と俳句

後撰和歌集

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壬生忠見
しほといへばなくてもからき世の中にいかであへたるたたみなるらむ

元輔
住吉の岸とも言はじ沖つ浪なほうちかけようらはなくとも

七条のきさき
ことのはにたえせぬ露はおくらんや昔おぼゆるまどゐしたれば

御返し 伊勢
海とのみまどゐの中はなりぬめりそなからあらぬかげのみゆれば

黒主
何せんにへたのみるめを思ひけんおきつたまもをかづく身にして

躬恒
ひるなれや見ぞまがへつる月影をけふとやいはむきのふとやいはん

藤原滋包がむすめ
くやしくぞあまつをとめとなりにける雲ぢたづぬる人もなきよに

兼輔朝臣
人のおやの心はやみにあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな

大江玉淵朝臣女
難波潟なににもあらずみをつくし深き心のしるしばかりぞ

中務
あけてだに何にかは見むみづのえのうらしまのこを思ひやりつつ

忠峯
年をへてにごりだにせぬさびえには玉も帰りて今ぞすむべき

兼輔朝臣
ふるさとのみかさの山はとほけれど声は昔のうとからぬかな

躬恒
ひきてうゑし人はむべこそ老いにけれ松のこたかく成りにけるかな

女のはは
を山田のおどろかしにも来ざりしをいとひたふるに逃げし君かな

むすめの女御
いかでかの年きりもせぬたねもがな荒れたるやどにうゑて見るべく

斎宮のみこ
春ごとに行きてのみみむ年きりもせずといふたねはおひぬとかきく

右大臣師輔
思ひきや君が衣をぬぎかへてこき紫の色をきむとは

返し 庶明朝臣
いにしへも契りてけりなうちはふきとひ立ちぬべし天の羽衣

大輔
ふるさとの奈良のみやこのはじめよりなれにけりともみゆる衣か

返し 雅正
ふりぬとて思ひもすてし唐衣よそへてあやな怨みもぞする