和歌と俳句

後撰和歌集

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伊勢
身のうきを知ればはしたになりぬべみ思ひはむねのこがれのみする

よみ人しらず
くもぢをも知らぬ我さへもろこゑにけふばかりとぞなきかへりぬる

よみ人しらず
まだきからおもひ濃き色にそめむとやわか紫のねをたづぬらむ

伊勢
見えもせぬ深き心をかたりては人にかちぬと思ふものかは

伊勢
伊勢の海に年へてすみしあまなれどかかるみるめはかづかざりしを

兼輔朝臣
あしひきの山の山鳥かひもなし峰の白雲たちしよらねば

藤原のただくに
我ならぬ草葉もものは思ひけり袖より外における白露

伊勢
人心嵐の風のさむければこのめも見えず枝ぞしをるる

よみ人しらず
うきながら人をわすれん事かたみわが心こそかはらざりけれ

源のひとしの朝臣
うたたねのとこにとまれる白玉は君がおきける露にやあるらむ

返し ある法師
かひもなき草の枕におく露の何にきえなでおちとまりけむ

よみ人しらず
思ひやる方もしられずくるしきは心まどひのつねにやあるらむ

左大臣実頼
鈴虫におとらぬねこそなかれけれ昔の秋を思ひやりつつ

よみ人しらず
夕暮れのさびしきものはあさがほの花をたのめるやどにぞありける

貫之
ははそ山峰の嵐の風をいたみふることのはをかきぞあつむる

こまちがあね
世の中をいとひてあまのすむ方もうきめのみこそ見えわたりけれ

伊勢
山河のおとにのみきくももしきを身をばやなから見るよしもがな

よみ人しらず
世の中はいかにやいかに風のおとをきくにも今は物やかなしき

返し 伊勢
よのなかはいさともいさや風のおとは秋に秋そふ心地こそすれ

よみ人しらず
たとへくる露とひとしき身にしあらばわが思ひにもきえむとやする