和歌と俳句

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ふみわたる墓畔の雪の白極み 蛇笏

雪の降る幹の林立ゆくかぎり 蛇笏

くすぐるごとき哀歓の雪降り初めぬ 草田男

紅き実は滑らかいまだ雪積まず 草田男

折々や渦の真中に雪墜つる 草田男

面影迫りて祈るほかなし面打つ雪 草田男

我が死苦は重かれ雪のみ清浄なる 草田男

息やはらかく降る雪にお晩です 林火

雪やまず湯を溢れさす若き肩 林火

一湾に網羅の雪のたのしまずく 不死男

キリストに窓越えせまる雪の量 林火

爐に足を焦がすな雪は積むばかり 林火

昏くおどろや雪は何尺積めば足る 林火

つかみ啖う雪貧の筋骨たくましく 三鬼

雪片をうけて童女の舌ひつこむ 三鬼

石橋に厚さ増しつつ雪軽し 三鬼

降る雪に触れんと蔓ら這ひまはる 鷹女

降る雪や痩せて暗処にナフタリン 不死男

組足の磔像これも雪卍 不死男

遺壁あはれ千々に雪被る聖童子 不死男

雪を堀り日をついばめり自愛の鴉 鷹女

恩讐や雪の白さに翅たたみ 鷹女

伏目して雪は練炭置場にも 鷹女

雪掴み食べて胃の腑をかがやかす 鷹女

積雪や雪もて満たす旅鞄 鷹女

蛍光の蒼き雪道末世なり 誓子

雪の降る宙ゴンドラに女子ひとり 誓子

放牧の柵開きしまま雪積もる 誓子

傾けて火口の雪をすこし見す 誓子

雨情詩碑鶏はとさかで雪払ふ 静塔

栗の本よむ栗園の雪真白 静塔

雪真白空白に詩を書かで置く 静塔

開拓の唄か独語か雪のつる 静塔

雪国のいつも目の前雪がふる 静塔

だんまりの深雪一行子を中に 静塔

入院車ゆきて深々雪轍 多佳子

雪はげし化粧はむとする真顔して 多佳子

雪映えの髪梳くいのちいのりつつ 多佳子

雪の日の浴身一指一趾愛し 多佳子

雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 多佳子

雪の湖井伊大老の居城立つ 青畝

雪しづか愁なしとはいへざるも 汀女

村々の墓の茶碗に雪がふる 不死男

屋根雪の重さ火責の薬缶ひとつ 不死男

ふる雪に青の愁ひの病馬の湯 不死男

茂吉ねむる雪に童の墓刺さり 不死男

高嶽は高きに雪を捧げ持つ 誓子