冬来る地の福音にこころ満ち
歓楽の灯を地にしきて冬星座
厳寒の日のはるかにて磨崖佛
峡川の橋にかかりて冬の音
歳月をたのしまざりき冬の山
心徹り気の昂りたる冬ごもり
日の光りつきささる野路霜ながれ
こがらしの波止人埋むところなし
寒星や地に物故せし聖者の數
冬の空こころのとげをかくし得ず
むささびに降りやむ雪のなほ散れる
ふみわたる墓畔の雪の白極み
雪渓の水とどまらず總落葉
雪の降る幹の林立ゆくかぎり
降りやみて雪山鎮む月あかり
寒日の西空あかり思惟ふかく
木原の日くらげのごとく凍の空
北風高し尼僧の穿きて木靴鳴る
寝しづみて老が火を吹く寒の闇
爐をあけて深山住ひの午下り
あしたより風少しある爐のけむり
手弱女の高臀にして十二月
象潟の弓張月や曇れども
溪の樹に凍み透る日の昇るなり