和歌と俳句

鳥の名のわが名がわびし冬侘し 鷹女

貝族の呟き冬はこれからです 鷹女

中年や独語おどろく冬の坂 三鬼

石鹸を切つて引きあげゆきし冬 不死男

莨火をかばふ埋立冬一色 不死男

焼跡に鶏むしられてふたたび冬 不死男

革命歌ちかづく冬の墓標群 楸邨

虹消えて馬鹿らしきまで冬の鼻 楸邨

青天のどこもいきいき冬の煙 楸邨

冬の視野一黒煙をえてさだまる 楸邨

幾千の銀座の顔の冬の黙 楸邨

臥つつおもふ宗谷の果の冬の梁 楸邨

鴉群れわれに苦役のごとき冬 節子

モナリザ常に硝子の中や冬つづく 三鬼

いつまで冬母子病棟の硝子鳴り 三鬼

また夢に入り来て冬の街の角 楸邨

雪無くて過ぎぬ友亡き後の冬 波郷

磔刑の如書を冬の書見器に 波郷

鍵穴を冬が覗けり語らずも鷹女

冬の舗道を冬の波郷が近づき来 楸邨

屋上を煤かけめぐる医師の冬 三鬼

母なき冬石臼の目をきざむ音よ 草田男

かきならす香炉の灰もいつしか冬 草田男

名園の冬きよらかに人乏し たかし

峡川の橋にかかりて冬の音 蛇笏

無器用や朱の金魚に潤ふ冬 不死男

目覚めゐて雨をきゝをり宿の冬 立子

鎌倉の町中にあり寺の冬 立子

亀行けば甲羅が去りぬ全き冬 不死男

石垣の間に鳩住めり濠の冬立子