和歌と俳句

秋元不死男

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獄を出て職なしいぶる炭はさむ

何して食はん獄出て冬の浪の前

八つ手に霜獄にかへらば妻如何に

妻隠や冬山われに距離ちぢめず

歳月の獄忘れめや冬木の瘤

獄出て七日白冬の富士ややなじむ

冬バラを剪りたる妻の貌消えし

枯木坂垂れて天より犬がくる

石鹸を切つて引きあげゆきし

寒月に大いに怒る轍あり

莨火をかばふ埋立冬一色

焦土に月日外套の釦ネオン受く

冬の暮波かけおりて岩のこる

鮒釣つて金箔こぼす枯野かな

冬の河午後も木影の整はず

染料の虎色にじむ冬の河

冬木より痒がる孤児の影が濃し

ひとつ枯れかくて多くの蓮枯るる

飛ぶ鴎十二数へて河寒し

降り出すや墓の雪装刻刻と

師をもつや冬まで落ちぬ石榴の実

焼跡に鶏むしられてふたたび

眼に集ふ冬田の亀裂紛れなし

灯の寒し殊に鉄路を示す灯の

降るを天階に見ず畦に見る