獄を出て職なしいぶる炭はさむ
何して食はん獄出て冬の浪の前
八つ手に霜獄にかへらば妻如何に
妻隠や冬山われに距離ちぢめず
歳月の獄忘れめや冬木の瘤
獄出て七日白冬の富士ややなじむ
冬バラを剪りたる妻の貌消えし
枯木坂垂れて天より犬がくる
石鹸を切つて引きあげゆきし冬
寒月に大いに怒る轍あり
莨火をかばふ埋立冬一色
焦土に月日外套の釦ネオン受く
冬の暮波かけおりて岩のこる
鮒釣つて金箔こぼす枯野かな
冬の河午後も木影の整はず
染料の虎色にじむ冬の河
冬木より痒がる孤児の影が濃し
ひとつ枯れかくて多くの蓮枯るる
飛ぶ鴎十二数へて河寒し
降り出すや墓の雪装刻刻と
師をもつや冬まで落ちぬ石榴の実
焼跡に鶏むしられてふたたび冬
眼に集ふ冬田の亀裂紛れなし
灯の寒し殊に鉄路を示す灯の
降る雪を天階に見ず畦に見る