和歌と俳句

正岡子規

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風あるる 伊勢の浦わの 濱荻の 枯れて音なき 冬は来にけり

我門に 立てる枯木の ほの見えて 星まばら也 夕やみの空

舟つなぐ 三津のみなとの 夕されば 苫の上近く 飛ぶ千鳥かも

むさし野を われ行き居れば 上つ毛や 赤城の山に 雪ふれる見ゆ

有明の 廿日の月の はらはらと しぐれて消ゆる 杉のむら立

はし鷹の にらみて居れば 枯草の 葉かくれあへず 飛ぶ小鳥かな

古葉皆 落ちてものなき 梢より 星吹きちらす 木枯の風

筒の音の こだますさまし 山路行けば 血しほにしほる 紅の雪

すまの浦や いそうつ波の おと絶て 松の木末に 白帆行見ゆ

かへらじと かけてぞちかふ 梓弓 矢立たばさみ 首途すわれは

ひとりもの思ふ夕ぞ すまの浦に 西風すさみ 浪たつらしも

かそいろの 子を思ふとも いとし子の 親を思ふとも 君はしらじな

沖つかい いかにはねてか 左手なる 松の小嶋の 右手にいにしかも

常規は 今歸りなん つねのりは 君にわかれて 今歸りなん

舟にして 家やはいづく わたつみの 見ゆる限りは 見るものもなし

一たびは つなぎとめたる 玉の緒の いつかは絶えん あすかあさてか

朝日うつる こがねの波に むれ遊ぶ 亀かと見えて 八洲浮ぶなり

水上は 嵐吹くらし 大井川に 紅葉おしわけて 筏さすなり

夜をこめて 熊や射つらん 暁の 血しほ氷れり 白雪の上に

一聲は 死出の田長か 極楽の 道はと問へど 二の聲もなし

夏の日の あつもり塚に 涼み居て 病気なほさねば いなじとぞ思ふ

横にふる かうべの里を 立ちいでて 又こりずまに 鳴くほととぎす