和歌と俳句

正岡子規

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火の神は いたく怒れか 青山を 枯山なして 焼きからすらん

さくくしろ いすずの宮の 神杉を 焼きにと聞くも かしこきものを

はふり等が 神にはあらず 國民の 神といつく神 なげがしそゆめ

いたづらに しづめまつりし 風の宮 向ふほのほを 吹きもかへさず

神風や 伊勢の内外の 宮柱 焼くる御代にも 逢はむと思へや

夏桑の 畑に雪ふり わたらひの いすずの宮に 火は飛びにけり

この年は 火の多き年ぞ 神風の 伊勢の御社 それも焼けにき

天照す すめらみ神の 御社は ゆゝしかしこし 御屋根焼けたり

うれしくも のぼりし富士の いただきに 足わななきて 夢さめんとす

亡き友と ありし昔を かたらひて 泣かんとすれば 夢さめにけり

おそろしき ものは小道の きはまりて あとより牛の 追ひせまる夢

おそはれし 宵寐の夢の 驚けば 薬まゐれと みとり女のいふ

陸を行き 雲居をかける 夜半の夢 さむればものと 足なへにして

昔見し 須磨の松原 思へども 夢にも見えず 須磨の松原

われ昔 学びのわざの にぶくして 叱られしことぞ 夢に見えつる

うたゝ寐の うたゝ苦しき 夢さめて 汗ふき居れば 薔薇の花ちる

妹思ふ 思ふと畫かく 神少女 目つら顔ばせ 妹か神かと