和歌と俳句

正岡子規

67 68 69 70 71 72 73 74 75 76

よき人を 埋めし跡の 墓の石に 山茶花散りて 掃く人もなし

亡き友の 亡きを悲しみ 思ひをれば 車の上に 涙落ちけり

家と家の あはひの坂を 登り行けば 廣場を前に 君の家あり

葉の落ちし 櫻を見れば 春花の 咲きのさかりに 来ざりしも惜し

敷物を あつみうれしみ 家のごと 股さしのべて 物うち語る

洋服の 破れたる著て 槌持ちて 鍛はんとする 人がたあはれ

かぬち君は かぬちのみおや 天津麻羅を かしこみと鑄よ その天津麻羅を