月の夜の 蓮のおばしま 君うつくし うら葉の御歌 わすれはせずよ
たけの髪 をとめ二人に 月うすき 今宵しら蓮 色まどはずや
荷葉なかば 誰にゆるすの 上の御句ぞ 御袖片取る わかき師の君
おもひおもふ 今のこころに 分ち分かず 君やしら萩 われやしろ百合
いづれ君 ふるさと遠き 人の世ぞと 御手はなちしは 昨日の夕
三たりをば 世にうらぶれし はらからと われ先ず云ひぬ 西の京の宿
今宵まくら 神にゆづらぬ やは手なり たがはせまさじ 白百合の夢
夢にせめて せめてと思ひ その神に 小百合の露の 歌ささやきぬ
次のまの あま戸そとくる われをよびて 秋の夜いかに 長きみぢかき
友のあしの つめたかりきと 旅の朝 わかきわが師に 心なくいひぬ
ひとまおきて をりをりもれし 君がいき その夜しら梅 だくと夢みし
いはず聴かず ただうなづきて 別れけり その日は六日 二人と一人
もろ羽かはし 掩ひしそれも 甲斐なかりき うつくしの友 西の京の秋
足となりて 逢はむそれまで 思ひ出でな 一つふすまに 聞きし秋の声
人の世に 才秀でたる わが友の 名の末かなし 今日秋くれぬ
星の子の あまりによわし 袂あげて 魔にも鬼にも 勝たむと云へな
百合の花 わざと魔の手に 折らせおきて 拾ひてだかむ 神のこころか
しろ百合は それその人の 高きおもひ おもわは艶ふ 紅芙蓉とこそ
さはいへど そのひと時よ まばゆかり 夏の野しめし 白百合の花
友は二十 ふたつこしたる 我身なり ふさはずあらじ 恋と伝へむ