和歌と俳句

小林一茶

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あのをとつてくれろと泣子哉

朝露に浄土参りのけいこ哉

裸児と烏とさはぐ野分

膳先は葎雫や野分吹

腹の上に字を書ならふ夜永

あばら骨なでじとすれど夜寒

山雰のさつさと抜る座敷哉

秋風に歩行て迯る蛍哉

橋杭や泥にまぶれしきりぎりす

親に似た御皃見出して秋の暮

長き夜や心の鬼が身を責る

蜻蛉の尻でなぶるや角田川

汁鍋にむしり込だり菊の花

かな釘のやうな手足を秋の風

迯しなに足ばし折なきりぎりす

ボンボリにはつしとあたる木実哉

木兎が杭にちよんぼり夜寒

けふ迄はまめで鳴たよきりぎりす

秋風や櫛の歯を引くおく道者

おれが坐もどこぞにたのむ仏達

白露や茶腹で超るうつの山

夕やけや人の中より秋が立

ふんどしに笛つつさして星迎

六十に二ツふみ込む夜寒

寝た犬にふはとかぶさる一葉