こほろぎのとぶや唐箕のほこり先
鍬さげて神農顔やきくの花
はつ雁も泊るや恋の軽井沢
秋風や磁石にあてる古郷山
首出して稲付馬の通りけり
蟷螂や五分の魂見よ見よと
山雀の輪抜しながら渡りけり
秋風やむしりたがりし赤い花
蛬身を売れても鳴にけり
ぼんの凹から冷しけり天の川
稲妻に並ぶやどれも五十顔
歯ぎしみの拍子とる也きりぎりす
子宝の多い在所や夕ぎぬた
頬げたを切さげられな鵙の声
仰のけに落ちて鳴けり秋のせみ
銭箱の穴より出たりきりぎりす
朝寒や垣の茶笊の影法師
立鴫や我うしろにもうつけ人
遠山が目玉にうつるとんぼ哉
古郷や近よる人を切る芒
いくばくの人の油よ稲の花
我味の柘榴に這はす虱かな
鬼灯の口つきを姉が指南哉
踊から直に朝草かりにけり
門の月暑がへれば友もへる