和歌と俳句

小林一茶

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朝顔の上から取や金山寺

朝顔や吹倒されたなりでさく

汁の実の足しに咲けりきくの花

蘭のかや異国のやうに三ケの月

膝の子や線香花火に手をたたく

初茸を握りつぶして笑ふ子よ

有合の山ですますやけふの月

深川や蠣がら山の秋の月

三絃でを立たする潮来哉

秋風や谷向ふ行影法師

秋風にふいとむせたる峠かな

六十年踊る夜もなく過しけり

稲妻やかくれかねたる人の皺

我星はひとりかも寝ん天の川

鳴な虫あかぬ別れは星にさへ

墨染の蝶もとぶ也秋の風

旅人の藪にはさみし稲穂

町中や列を正して赤蜻蛉

海見る芝に坐とるや焼菌

寝咄の足でおりおり鳴子哉

知た名のらく書見えて秋の暮

菊月や外山は雪の上日和

鳴やつづいて赤子なく

朝皃や湯けぶりのはふぬれ肱

朝皃やひとの皃にはそつがある