北原白秋

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伏拝 越えつつくだる 道の奥 道祖の神に 幣たてまつる

伏拝 越え来てひろふ 日のあたり これよりやいよよ 奥のほそみち

人像と 藁の小積は 数立ちて なほうそ寒き 刈田つづくか

みちのくの 信夫文字摺 かくながら 日の寒うある 岩の面にして

冬日ぐれ 文字摺石の 傍遊ぶ 子らが石蹴り 音ひびきけり

ちびと啼く 花吸鳥は 水さむき 阿武隈越えて 何にかも来し

清らけく 雪に遊ぶは 白鷺の 水あさりする たぐひならまし

今朝ふりて 清明けき雪や 積む雪の 踏めば粉に立つ その浄ら雪

雪の原 霧華咲き満つ まさしくも 白くさやけき これや一色

風やみて 紫にほふ 雪の襞 この片陰に 集ひて居れば

落葉松に 夕粉雪ぞ つもりける 末うごきつつ しみらなる枝

落葉松に 粉雪ふりつむ 日くれがた ひた滑りつつ 我はありける

積む雪の 下深くゆく 水あらし 風かとも聴くに せせらぎにけり

和歌と俳句