和歌と俳句

秋の草

秋くさを下げしわが手にさす日かな 万太郎

秋草に歩みをとどむる足袋白き 草城

若き日の校歌くちずさみ秋くさに 草城

秋草をただ挿し賤しからざりし 虚子

秋草をとりてひややか菩提心 蛇笏

秋くさやしばらくは日のさしわたり 万太郎

秋くさを咲かせて塀の高きかな 万太郎

秋くさに芝居みにゆく仕度かな 万太郎

秋草に隠れ隠るる一日かな 波郷

秋草や焼跡は川また運河 波郷

秋草を抜く二房の乳重たし 静塔

秋草に寝れば鶏鳴「タチテユケ」 三鬼

万葉のこころに濡れて秋の草 風生

各々の摘みし秋草一つ壺に 立子

秋草の花こまやかやどの道も 汀女

身に靡き入る秋草を追うだけだ 耕衣

秋草の道の案内もさびしさに 汀女

家中を秋草にせよと抱へ来る 林火