和歌と俳句

秋の草

雲仙の秋の草々妹が眼にも 誓子

秋草に疲れきし鵜の身を寄せぬ 楸邨

うつつなく鵜は秋草の籠にねむり 楸邨

秋草や、ふるさとちかうきて住めば 山頭火

秋草を生けてひとすぢ葉垂るゝ 立子

秋草や七ツ葉ことにあきらかに 立子

秋草や狐に似たつ熊野犬 淡路女

秋草の多きにつれて人恋し 草田男

秋草をもたらし塞ぐ燈下かな 草田男

朝早や誰ぞ秋草をとりもどる 汀女

秋草に救苦観世音立たせけり かな女

御頬ぬれて優し秋草観世音 かな女

秋草の御浄土なり甘露慈雨 かな女

秋草に大地沈みてゆくおもひ 鷹女

虚子句集置く極北の秋草に 青邨

秋草に遊んでくるるよその犬 汀女

わが足へ如来の御瞳や秋の草 耕衣

鶴降りて秋草くもるところかな 耕衣

大日如来われもうつくし秋の草 耕衣

白秋
虫の音の繁かるかなとしろがねの箸そろへをり苑の秋ぐさ

秋草に礎石十二ありみな光る 楸邨

秋草のすぐ萎るるをもてあそび 汀女

秋草の峠に見しや馬籠宿 たかし

あきくさをごつたにつかね供へけり 万太郎

秋草に昔のひとの娘吾妻佇つ 草田男

秋草に礎石十二ありみな光る 楸邨

交りて一茎あかき秋の草 占魚

ふるさとの秋草高き駅に佇つ 信子