鈴虫や松明さきへ荷はせて 其角
鈴むしの鳴やころころと露の玉 暁台
すゞむしや手あらひするも蒔絵もの 暁台
良寛
音にのみ鳴かぬ夜はなし鈴蟲のありし昔の秋を思ひて
良寛
秋の野に誰れ聞けとてかよもすがら聲降り立てて鈴蟲の鳴く
良寛
秋風の夜毎に寒くなるなべに枯野に残る鈴蟲の聲
鈴蟲や露をのむこと日に五升 子規
鈴虫や土手の向ふは相模灘 子規
飼ひ置きし鈴虫死で庵淋し 子規
晶子
鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子の君のためにと秋を浄むる
窪田空穂
鳴かずなりしすず虫放ちわが童庭を見つめる小腰かがめて
鈴虫のひげをふりつつ買はれける 草城
鈴虫に須磨の人とて遙かかな かな女
雨来り鈴虫声をたたみあへず 亞浪
鈴虫を聴く庭下駄を揃へあり 虚子
夫とふたり籠の鈴むし鳴きすぎる 貞
太柱鈴虫の声飼はれゐて 静塔
鈴虫の音をくらべむと目をつむる 青畝
思ひさへ鳴く鈴蟲にはばかられ 汀女
鈴蟲が死して一寸法師泣く 不死男
鈴蟲のお伽に安き眠りかな みどり女
声出せば鈴蟲鈴を振り出しぬ みどり女