我に無し 日はも夜も無し 心ぐく ただに思ふは 子らが額髪
事しありて 君とこそ行け 我どちは 音清々し 響かひ行かむ
夜のほどろ 疲れ帰りて 力無し 山方早く 蝉の啼くもよ
夜の田には 蛙ころろぐ 聴けよ聴けよ あはれなるものは 声ころろぎぬ
日は照るを 将た安からし 師と頼む 市に引き出て 早や放り売る
夏早やも 棘に花さく 覇王樹の 琉球びとも すべなかるらし
国びとは 心直なり 梧桐の 青一色に 表裏も無し
その子らは かくも歎くを 石うつと 師父なる人を 将た縛しめぬ
焼き鉄よ はやるひづめに 蹄鉄うつと 己が踝も 火もて焼きそね
眼の白き 生の鰯は 簀に竝めて 日乾あまぼし 串に刺せちふ
鈎爪の 脊骨曲りが 鈎形に 歩きはらばひ 石の下掘る
翳ふかき 醜の土竜が 土やぐら たたきうちこぼち 日に曝すべし
朝なさな 机ならべて ありけらし 今譏り合ひて 子ら教へをり
何頼め 降らす石かも 草ごもり 家居る際は 香すらえ立てず
男子なれ ふぐり締めこそ ひよろ腰の へなへな臀 むしろうつべし
清明かる けだし稀なり 自がためと 草のいきれを 汗して歩けり
清しかも その新月の 眉あげて 敢然と立つ 少女ら見れば
藤棚の 藤の葉とほる 日のひかり つくづくと土に 見つつあらむか
少女らは はげし日中も 舎居らず 池のべ求めて 秘読むにけり
朝なさな 清にのぼりし 足音の 早やたどたどし 泣きて行くかに