北原白秋

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矢継ぎ早に 管矢継ぎ射る しばらくは 矢筈あてゆく ひまもなく見ゆ

つぎつぎと 矢継早にぞ 引く弓の 弦は鳴りぬ しづけきまでに

甲矢乙矢 射継ぎはなちて つく息の 事なかりけり 弓はをさめつ

相むかひ 声無き太刀の 鋒鋩は むしろ凄まじき 気合なるなり

気先には 撃つと見せつつ まじろがず 張り満つる力 極みなむとす

青眼に ひたとつけたる しづかなる 時たちにけり ひらめく一太刀

真向より 打ちおろす太刀 雷撃の この太刀風は 息もつかせず

一太刀に ひた打ちおろす、響あり 何を思はむぞ 小手先のわざ

体あたり かららと絡む 火のごとき 気合鍔にして 敢て押しにけり

白刃取 極む捨身の 入り早し 飛鳥の如く その手抑へぬ

男童ら 構凛々しく 肱立てて ゐずまふ見れば 張り切るごとし

母はいざ 国の童男が 相搏つと 対ひ構へぬ 小さき柔ら手

相むかふ 今か搏んず 面がまへ 丹田にして 気合満ちたる

えやと掛け おうと応ふる 張り満てる 童が気合 相搏つかすでに

身をあげて すべて相搏つ ひたごころ 童なれや 響き合ひにつつ

男童は 稚なかるとも 相搏つと ひとたび対ひ 面ふらぬかも

手は疾し 礼してぞ退く すなはちを じりりじりりと 寄り身にはゆく

早技と すくふただちの このきまり 大外刈の 型のよろしさ

師の道に おのれ鍛ふと たじろがず 力尽して その型学ぶ

薙刀の 一手ひらめき いつくしき 真夏なるなり しづもる塵に

しやつ小女童 小太刀するどし 老刀自の 薙刀ぐるま たとうちとめぬ

和歌と俳句