めらめらと 人馬も草も 燬きつくす 火焔砲とふに 冬ひた恐る
火焔砲 重戦車ピアノ鋼線 あはれあはれ 子らが遊びも 昂じ来にけり
戦は いつ止むとしも あらなくに 米ひた惜む 冬にぞ入りぬ
独居る 暗き眼にして 頼めたる 一と擦りのマチの 火すら惜みつ
ハルハ河 あはれとしいふ 言すらも 冬来にけらし 口を衝かずも
町に遇ふ 小さき兵隊 バンドには 代用らしき 締めてみ冬なり
北支那に 砲とどろきし 頃よりぞ 目見闇くなりて 我は籠りつ
かうがうし 菊の御紋は 透かし漉き 人つつましも 紙あつく漉く
閑けくて 偉き機構の 刷り出づる 百円紙幣は 現しけなくに
長江の 流れもかくや たうたうと 刷りいづる紙幣の 清の洪水
国の紙幣 日を夜をただに かく刷りて 幾百億円 刷るにやあらむ
截ち切るや 刷る間ただちを 香に澄みて 百円紙幣 手も切れぬべし
うち羽ぶき 常にもがもな 刷られゆく 紙幣昼夜なし 戦長きに
五色旗の 満洲紙幣 手童が ただに愛しぶ ものならなくに
紙幣・債券・印紙・郵便貯金帳 虹なして 刷りいづるところ 人鼠なす
円陣に 秘ゐる少女 鋭眼速く 紙幣検しをれ 早やおそれつつ
網の目の 蟻なす花文 うつしけき 百円紙幣を 指はじくなり
豊けかる 退けて出る子が ゆふぐれは 身のほそりして 悲しかるべし
大御代と 刷りいづる紙幣や 我は見て 大臣のごとく 闊く歩みき
我が戦 疑ふとには あらなくに 紀元二千五百九十年の 年の瀬今は