和歌と俳句

桔梗 ききょう きちこう

かぼそくて地に伏す桔梗あきらかに 蛇笏

烈日の美しかりし桔梗かな 汀女

旅の子の第一信や花桔梗 汀女

簾の垂りてはないろ淡き桔梗さく 蛇笏

白桔梗たましひぬけといひつべし 青畝

桔梗や男も汚れてはならず 波郷

桔梗のしまひの花を剪りて挿す 虚子

八ケ岳雲にうかべる野の桔梗 秋櫻子

白桔梗売るわらんべの一位笠 林火

桔梗を咲かしむるまで熔岩老いぬ 風生

沢桔梗はらばひ旅の顔浸す 登四郎

桔梗白しひたすらしろし汝を嘆く 万太郎

露晒し日晒しの石桔梗咲く 多佳子

東西南北いづこも濡れる濡れ桔梗 鷹女

甕満つるまで桔梗買ふ病廊に 波郷

独座永し桔梗五瓣の尖まで濃く 波郷

桔梗見る眼を遺さばや素晩年 耕衣

白桔梗いくたび重ねまた蕾む 悌二郎

桔梗の蕾をぽんと鳴らしけり みどり女

桔梗濃しいささか去年語らせよ 汀女

桔梗を引き寄せて体空しけれ 耕衣

しばらくは露の桔梗に座をまかす 汀女