和歌と俳句

花曇り

石にねて耳かく猫や花曇 石鼎

高階に人らゐて食ひ散らす花ぐもり 不死男

高階の歯科に子が泣く花ぐもり 不死男

時計の顔壁に退屈花曇 風生

花曇人にもまれて疲れけり 麦南

病院の静かに混める花曇 汀女

風立ちて身を揉む竹や花ぐもり 草城

花ぐもり鳴瀬に高き橋を踏む 草城

花曇二階にほせる旅衣 占魚

春嶽の甌窶にあそぶ花曇り 蛇笏

婆が手の蕨あをしも花曇 波郷

花曇かるく一ぜん食べにけり 万太郎

花ぐもり掃きだすあひだ待ちにけり 万太郎

砂みちのほのあかるしや花曇 万太郎

遺兒愛す情おのづから花ぐもり 蛇笏

もろもろの霊に有情のはなぐもり 蛇笏

よみにくき手紙よむなり花曇 万太郎

水栓に来てゐし水や花曇り 汀女

突風の吹きて忽ち花曇 虚子

ゆゑしらず我鬼をおもほゆ花ぐもり 蛇笏

炭の香の立つしづけさや花ぐもり 草城

老いて病む猫をいたはる花ぐもり 草城

誰も皆コーヒーが好き花曇 立子

たどんひとついけし火鉢や花ぐもり 真砂女

花ぐもり汐吹貝汐を吹きにけり 真砂女

類ひなき外出日和や花曇 虚子

親しきはフォスターの曲花ぐもり 草城

忍、空巣、すり、掻っぱらひ、花曇 万太郎

子の友らつぎつぎ嫁ぎ花ぐもり 草城

人づてにうはさきくだけ花ぐもり 万太郎

花ぐもりまだどこよりか花散り来 万太郎

白木屋の繁昌さなり花曇 万太郎

水を飲む猫胴長に花曇 波郷

口笛のみな旧き歌花曇 汀女

ことしまだ蜂の来らず花ぐもり 万太郎

古町にせんべ齧るや花曇 林火

玉子焼それも厚焼花ぐもり 万太郎

まつすぐに母を訪ふ道花曇 汀女

病人が唇あけてゐる花ぐもり 双魚

わが立てば病壁垂るる花ぐもり 不死男