和歌と俳句

蕗の薹

飛騨暮るる雪解湿りに蕗の薹 普羅

茂吉
みづからが もて来りたる 蕗の薹 あまつ光に むかひて震ふ

このあたり貝塚つづき蕗の薹 占魚

茂吉
蕗の薹 ひらく息づき 見つつをり 消のこる雪に ほとほと触れて

親疎おのづから蕗の薹もえにけり 

茂吉
蕗の薹 味噌汁に入れて 食はむとす 春のはじまりと わが言ひながら

蕗の薹師とや生地を等しくす 節子

青き色地に点じたる蕗の薹 虚子

摘まである妹が垣根の蕗の薹 虚子

皆水に浮きぬ手桶の蕗の薹 立子

雲流るる日や蕗の薹ひざまづき 林火

火山灰に生ふしかとむらさき蕗のたう 爽雨

残雪を軋ませつ摘む蕗の薹 悌二郎

をちこちに死者のこゑする蕗のたう 鷹女

蕗の薹炙れば父と居るごとし 風生

蕗の薹炙ればせちに父懐ふ 風生

雪退きし一尺前に蕗の薹 林火

機音に弾み出づるよ蕗の薹 林火

塀の外世の移りをり蕗の薹 林火