和歌と俳句

二月

波を追ふ波いそがしき二月かな 万太郎

砂みちに月のしみ入る二月かな 万太郎

爪とりて爪のつめたき二月かな 万太郎

長羽織著て寛濶の二月かな 万太郎

逆潮の沖へながるゝ二月かな 真砂女

手鏡や二月は墓の粧ひ初む 波郷

眼帯や街に二月の風荒き 信子

眼帯に二月の塀の屹立す 信子

夕月のみるみるしろき二月かな 万太郎

道のはてに荒るる海みえ二月かな 万太郎

人のよく死ぬ二月また来りけり 万太郎

また一人ふえし二月の佛かな 万太郎

弱りめにたたりめの二月来りけり 万太郎

枯笹に風鳴るばかり二月かな 万太郎

大船の戸塚の不二の二月かな 万太郎

二月寒し父似の眉の濃き娘 草城

竹林の月の奥より二月来る 龍太

ひろがりしうはさの寒き二月かな 万太郎

をちこちに松かぜおこる二月かな 万太郎

ペリカンのうづくまりたる二月かな 万太郎

霜よけにうき世の塵の二月かな 万太郎

欠けそめし月のあはれは二月かな 万太郎

われとわがつぶやきさむき二月かな 万太郎

清羮に菜の花黄なる二月かな 風生

春二月茶畑の富士窈窕と 風生

空の日のもののいろ吸ふ二月かな 万太郎

ぬしの棲む水のねむれる二月かな 万太郎

粉ぐすりもうぐひすいろの二月かな 万太郎

火の塵を十能こぼす二月かな 万太郎

夕づつのひかり身にしむ二月かな 万太郎

水盤に麦の穂高き二月かな 風生

火山行二月寒尾の六歳馬 不死男

病妻と風聞いてゐる二月かな 林火

臆病の一歩踏み出す二月かな みどり女

はじめての外出まぶしき二月かな みどり女