和歌と俳句

二月

鮒釣るに雪のちらつく二月かな 喜舟

渓橋に見いでし杣も二月かな 蛇笏

二月の障子しめきつて何も思ふまい 鴻村

三月の声きくまでの二月かな 石鼎

或夕べうすむらさきの二月かな 石鼎

仔をつれて鵯なきつる二月かな 石鼎

啼きあうて鵯いとけなき二月かな 石鼎

連翹の鬱金に雪の二月かな 鷹女

木のひかり二月の畦は壊えやすし 秋邨

死火山の夜さむきまで二月空 蛇笏

二月をかし八手柊とあせんぼと 石鼎

二月来るながき眉毛を吾がひけば 鷹女

おもふことみなましぐらに二月来ぬ 鷹女

死もたのし二ン月穹の蒼き日は 鷹女

つはものの雄叫ぶ文と来し二月 鷹女

しらじらと二月荒浪吾を喚べる 鷹女

詩に痩せて二月渚をゆくはわたし 鷹女

二ン月の雲濃し兵の妻を訪ふ 鷹女

二ン月の心に入り来つはものら 鷹女

梅二月ひかりは風とともにあり 麦南

月繊にまことしづけくある二月 石鼎

雪嶺の二月南方戦果に満つ 誓子

二月の雲象かへざる寂しさよ 多佳子

二ン月や鋸使ひては地に置き 誓子