なつかしき人やあまたにとし明ぬ 土芳
一葉
のどかなる空の色かな年たちてゆるぶは人のこころのみかは
新年の白紙綴ぢたる句帖哉 子規
子規
うつせみの 我足痛み つごもりを うまいは寐ずて 年明けにけり
子規
枕べの 寒さばかりに 新玉の 年ほぎ縄を かけてほぐかも
子規
いたつきの 長き病は いえねども 年の始と さける梅かも
子規
新玉の 年の始と 豊御酒の 屠蘇われのみぬ 病いゆかに
晶子
わが息の虚空に散るも嬉しけれ年の明けたる一日二日
先づ女房の顔を見て年改まる 虚子
日輪は古びて廻り年新た 虚子
年立つや吹雪は笛を鳴らし来る 普羅
年立つや音なし川は闇の中 万太郎
迢空
新しき年のはじめの春駒の をどりさびしもよ。年さかりたり
茂吉
欧羅巴に わたりて 第三回の この新年を 静かならしめ
ひそかなる枯菊に年改る たかし
年立つや旅笠かけて山の庵 蛇笏
茂吉
あたらしき 年のはじめは 楽しかり わがたましひを 養ひゆかむ
茂吉
おのづから 心つかれて 我は居り われに五十の 年明けにけり
水音の、新年が来た 山頭火
茂吉
新しき年のはじめにおもふことひとつ心につとめて行かな
ふるさとの年新たなる墓所の雪 蛇笏
年立ちて心静けき起居かな 淡路女
茂吉
一年のはじめといへば迫りくるののおもひもなく寂かにあらな
みやま川連理の鳥に年たちぬ 蛇笏
年立てり家政の鍵の錆ぶままに しづの女
祷る窓かもめ瀟酒に年立ちぬ 蛇笏
年新た嶺々山々に神おはす 蛇笏
老の愛水のごとくに年新た 蛇笏
門前の雲をふむべく年新た 蛇笏
おほみそら瑠璃南無南無と年新た 蛇笏
年立てり病の床を敷き更ふる 貞
ことさらのおもひ深雪に年立ちて 貞
新年の病臥の幾日既に過ぎ 誓子
新年の深雪ぬくとく愛馬飼ふ 蛇笏
あらたまの年のひかりに萬年青の實 蛇笏
天さかる鄙のはつ虹年新た 蛇笏
富士皓といよよ厳しき年は来ぬ 亞浪
焼夷弾あかあかひらき年明けぬ 楸邨