和歌と俳句

松尾芭蕉

五月の雨岩ひばの緑いつ迄ぞ

郭公まねくかのむら尾花

五月雨に鶴の足みじかくなれり

愚にくらく棘をつかむ

闇夜きつね下ばふ玉真桑

夕皃の白く夜の後架に帋燭とりて

ほととぎす正月は梅の花咲けり

清く聞ん耳に香焼て郭公

椹や花なき蝶の世すて酒

青ざしや草餅の穂に出つらん

馬ぼくぼく我をゑに見る夏野

忘れずは佐夜の中山にて涼め

時鳥を染にけりけらし

雪の中は昼顔かれぬ日影哉

昼顔に米つき涼むあはれ也

戸の口に宿札なのれほととぎす

杜若われに発句のおもひあり

いざともに穂麦喰はん草枕

梅こひて卯花拝むなみだ哉

団扇もてあふがん人のうしろむき

白げしにはねもぐ蝶の形見哉

おもひ立木曾四月のさくら狩

牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残哉

鳥さしも竿や捨けんほととぎす

行駒のに慰むやどり哉