若山牧水

この年の 秋を雨おほみ 土けぶる けふの日和に 畑にぎはへり

秋ならで いつか見るべき 山のうへの 彼の真白雲 かがやけるはや

やはらかく 照るは桜か 畑の畔の ほそほそつづく 雑木の黄葉

つち掘れる 金属の音の をちこちに 冴えつつ真昼 せきれい飛べり

はつはつに 秋を霞める 武蔵野の 練馬の里の 汽車よりぞ見ゆ

中にありて 黄菊は霜に 強からし さかり過ぐとふ 菊のはたけに

褪せ褪せて いまだは朽ちぬ むらさきの 薊のはなに 薄霜の見ゆ

めぐらせる 籬の楓 もみぢして 桐のはたけは さびにけるかも

落つる葉の いづれ乾びて ひろければ うづたかきかも 桐のはたけに

晴れし日は 冴えてたふとく 曇りては くもりて白し 冬の桐の木

竹薮の 蔭あらはなる 赤土の 乾きまひつつ 続く冬晴

この冬は 時雨も降らで 庭さきに つのぐめる木木 塵うきて見ゆ

こもりゐて 家のめぐりの ほこりだち 晴れつづく頃に 咲ける梅かも

けふもまた 曇は晴れて 庭の木に 来啼く雀の こゑのさびしも

浅薮の 竹の垂枝の 葉ごと葉ごと 赤らみ見えて 晴続くかも

坂みちの 落葉古りつつ 片岡の この櫟原 春めくものか

うらうらと 伸び静まれる 馬のつら かすかに笑ふ 冬のひなたに

和歌と俳句